彼はこの長者の窘めるを傍に見かねて、貫一が枕に近く差寄りて窺へば、涙の顔を褥に擦付けて、急上げ急上げ肩息してゐたり。何事とも覚えず驚されしを、色にも見せず、怪まるるをも言に出さず、些の心着さへあらぬやうに擬して、
「お客様がいらつしやいましたよ」
「今も言ひました通り、一向識らん方なのですから、お還し申して下さい」
 彼は面を伏せて又言はず、満枝は早くもその意を推して、また多くは問はず席に復りて、
「お人違ではございませんでせうか、どうも御覚が無いと有仰るのでございます」
 長き髯を推揉みつつ鴫沢は為方無さに苦笑して、
「人違とは如何なことでも! 五年や七年会はんでも私は未だそれほど老耄はせんのだ。然し覚が無いと言へばそれまでの話、覚もあらうし、人違でもなからうと思へばこそ、かうして折角会ひにも来たらうと謂ふもの。老人の私がわざわざかうして出向いて来たのでのう、そこに免じて、些とでも会うて貰ひませう」
 挨拶如何にと待てども、貫一は音だに立てざるなり。
「それぢや、何かい、こんなに言うても不承してはくれんのかの。ああ、さやうか、是非が無い。 高級デリヘルASK 山椒は小粒でもぴりりと辛い
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