黒媛のことをしじゅうあわれに思い思いお暮らしになっていました。そんなわけで、天皇はついにある日、淡路島を見に行くとおっしゃって皇后のお手前をおつくろいになり、いったんその島へいらしったうえ、そこから、黒媛をたずねて、こっそり吉備まで、おくだりになりました。
黒媛は天皇を山方というところへおつれ申しました。そして、召し上がり物にあつものをこしらえてさしあげようと思いまして、あおなをつみに出ました。すると天皇もいっしょに出てご覧になり、たいそうお興深くおぼしめして、そのお心持をお歌にお歌いになりました。
天皇がいよいよお立ちになるときには、黒媛もお別れの歌を歌いました。媛は天皇がわざわざそんなになすって、隠れ隠れてまでおたずねくだすったもったいなさを、一生お忘れ申すことができませんでした。
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