そのお酒をおつぎになる御綱柏というかしわの葉をとりに、わざわざ紀伊国までお出かけになったことがありました。
 そのおるすの間、天皇のおそばには八田若郎女という女官がお仕え申しておりました。
 皇后はまもなく御綱柏の葉をお船につんで、難波へ向かって帰っていらっしゃいました。そのお途中で、お供の中のある女たちの乗っている船が、皇后のお船におくれて行き行きするうちに、難波の大渡という海まで来ますと、向こうから一そうの船が来かかりました。その中には、高津のお宮のお飲み水を取る役所で働いていた、吉備の生まれの、ある身分の低い仕丁で、おいとまをいただいておうちへ帰るのが、乗り合わせておりました。その者が船のすれちがいに、
「天皇さまは、このごろ八田若郎女がすっかりお気に入りで、それはそれはたいそうごちょう愛になっているよ」としゃべって行きました。それを聞いた女どもはわざわざ大急ぎで皇后のお船に追いついて、そのことを皇后のお耳に入れました。
川口駅徒歩3分 おおむら歯科医院 訪問歯科・一般歯科
書き込みはまだありません。