私はまったく、粉砕された気持であった。私にも笹川の活きた生活ということの意味が、やや解りかけた気がする。とにかく彼は、つねに緊張した活きた気持に活きるということの歓びを知ってる人間だ。そしてそのために、あるいはある場合には多少のやりすぎがあるかもしれない。しかしそれでもまだ自分のような生きながらの亡者と較べて、どんなに立派で幸福な生活であるか!
四五日経った。土井は私に旅費を貸してくれた。子供らへの土産物なども整えてくれた。私は例の切抜きと手帳と万年筆くらい持ちだして、無断で下宿を出た。
「とにかくまあ何も考えずに、田舎で静養してきたまえ、実際君の弱り方はひどいらしい。しかしそれもたんに健康なんかの問題でなくて、別なところ来てるのかもしれないが、しかしとにかく健康もよくないらしいから、できるだけ永くいて、十分静養してくる方がいいだろう。もっともそうした君を、田舎でも長く置いてくれるかどうかは、疑問だがね……」
上野から夜汽車に乗る私を送ってきてくれた土井は、別れる時こう言った。
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