「那裡のお客様の方へお出なすつたのでは御座いませんか」
「いいえ、貴方、那裡のお客様が急ぐと有仰つてで御座いますものですから、さう申上げに参つたので御座いますが、それぢやまあ、那辺へいらつしやいましたらう!」
「那裡にもゐらつしやいませんの!」
「さやうなので御座いますよ」
 老婢はここを倉皇起ちて、満枝が前に、
「此方へもいらつしやいませんで御座いますか」
「何が」
「あの、那裡にもゐらつしやいませんので御座いますが」
「旦那様が? どうして」
「今し方這裡へ出てお在になつたのださうで御座います」
「嘘、嘘ですよ」
「いいえ、那裡にはお客様がお一人でゐらつしやるばかり……」
「嘘ですよ」
「いいえ、どういたして貴方、決して嘘ぢや御座いません」
「だつて、此方へお出なさりは為ないぢやありませんか」
「ですから、まあ、何方へいらつしやつたのかと思ひまして……」
「那裡にきつと隠れてでもお在なのですよ」
「貴方、そんな事が御座いますものですか」
「どうだか知れはしません」
「はてね、まあ。お手水ですかしらん」
 随処尋ねんとて彼は又倉皇起ちぬ。
 有効無きこの侵辱に遭へる吾身は如何にせん、と満枝は無念の遣る方無さに色を変へながら、些も騒ぎ惑はずして、知りつつ食みし毒の験を耐へ忍びゐたらんやうに、得も謂れず窃に苦めり。宮はその人の遁れ去りしこそ頼の綱は切られしなれと、はや留るべき望も無く、まして立帰るべき力は有らで、罪の報は悲くも何時まで儚きこの身ならんと、打俯し、打仰ぎて、太息※くのみ。韓国デリヘルスタジオ Test Forum :: kide.forendino.de
書き込みはまだありません。