うちの姉さんがここらで白い蝶々を見たと云うから、わたしも今夜さがしに来たのだ。おまえも見たことがあるそうだね」
 藤助はそれに答えないで、また訊いた。
「その蝶々をさがして、どうなさるんです」
「どうと云うことも無いが、その蝶々が何だかおかしいから、つかまえて見ようと思うのだ」
「つかまえて……どうなさるんです」
「唯、つかまえるだけの事だ」と、長三郎はその以上のことを洩らさなかった。
「それならばお止めなさい」と、藤助は諭すように云った。「白い蝶々の飛ぶことはあります。寒い時に蝶々が飛ぶ。……考えてみれば不思議ですが、それには又なにか仔細があるのでしょう。お武家のあなた方がそんなことにお係り合いなさらぬ方がよろしいんです」
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